獣医師は感染症との闘いの歴史をたくさん体験してきました。
感染症は寄生虫感染、細菌感染、真菌感染、ウィルス感染と多岐に亘ります。
私が大学を卒業した当時、獣医師国家試験にも張られた山でもありましたが「イヌパルボウィルス性腸炎」が蔓延しておりました。しかも世界的にイヌパルボウィルス性腸炎が大流行していた最中でしたし、子犬がこれに感染しコロコロ亡くなっていくので日本では別名「コロリ病」とも言われていました。うまく治療に反応し復活した後でも5~6歳ごろになると心筋炎を発症し重篤化することも厄介な病気です。
当時はワクチンもなく、かろうじてネコの伝染性腸炎ワクチンが同じパルボウィルスであることから、動物種は異なるのですが多少の抗体価を上げる事ができるというデーターから、ネコのワクチンが各国で取り合いになり、なかなか私たちの手元には参りませんでした。
またこの地域では25年ほど前にジステンパーの感染が、とある地域で広がりました。
地域の大きな公園に連れ言っていた子犬が発症し、そこからコンパスで円を描くようにどんどん広がっていきました。
感染疑いのイヌに来院されますと院内感染を引き起こす可能性があったため、極力往診で対応しました。いつも帰りは夜中の1時か2時。それでも助かってくれた子が出たときは本当に疲れが吹っ飛びました。しかし一方では亡くなっていく子もいました。
他にも散発的ですがレプトスピラ症という湿地(川や池・沼地など)でネズミの尿からイヌやヒトも感染する疾患にも遭遇したこともあります。これはご家族や僕自身、僕の家族にも感染させてしまう疾病です。
ネコでは伝染性白血病、猫ウィスル性免疫不全症候群(ネコエイズ)、猫伝染性腹膜炎(コロナウィルス)、カリシウィルス感染症、クラミジア感染症。
大きな動物ではウシの口蹄疫、BSE、ウマでは馬伝染性貧血、ブタでは豚コレラ、鳥は鳥インフルエンザなどなど、古くは狂犬病と他にも伝染病には事を欠きません。
その都度獣医師は他への伝搬防止と治療にあたり、時には人にも感染する疾患の場合は自身や周囲への影響を絶えずチェックしながら行動する習慣が身についています。ゾーン分けもしっかりとやって来ました。
過激な任務のために精神を病む場合もありますし、身体への影響があらわになり職務を遂行できなくなることもあります。
もちろん現地から家庭に戻ることもできないため、数か月缶詰めになった友人もおりました。
今医療現場はまさに病気や従事者自身、メディアとの闘いを強いられています。言葉に表せない辛さが伝わってきます。
感染症との付き合い方はすでに有識者が語っておられますが、やはり熱望するのはワクチン。だたそれだけです。
私たちの過去を振り返りますと、イヌパルボウィルス性腸炎はワクチンが出来たことで急激に終息へと風向きが変わりました。
パルボウィルスは塩素消毒が有効で、それ以来動物病院では塩素消毒が定番となって居ります。
ある飼い主さんから「動物病院って塩素の匂いが良くするけど・・・」と言われたことがありますが、これは35~6年前からの習慣です。
考えますと私たちのどの動物病院も、一度診察するたびに診察台の消毒は毎回ルーティンに行って居ります。
寄生虫、細菌、真菌、ウィルスなど対応を変えて消毒しています。耐性を作らないように、次の症例に感染させないように。
ウィルス感染はそのウィルスの特性を知り、それに適応した消毒や行動の予防体制、そして治療に対応してゆくために、基礎医学の分野での一日も早く早急な明るい報告が待たれるところです。
ついてに:
彼らが必至で研究し医療現場では危険を承知で対応していると言うのに、営業しているパチンコ屋さんがあると聞きつけるや否や殺到する人たち。パチンコ屋さんでずっと球を打っているがいい・・。ごはんもそこで食べて、寝る時もそこで寝て。出てこないでくれ。
これは言いすぎでしょうか。
彼らがもしも感染しても、医療現場は彼らを受け入れるでしょう。腹が立っても受け入れて治療に当たるでしょう、分け隔てなく。とても複雑な思いがしてなりません。
医療現場を応援するメッセージや音楽がSNSで流れいます。なんともバランスの良くない現状にひたすら眉をひそめてしまう毎日です。今は応援も必要だと思いますが、患者にならないことが医療現場の熱意に報いる事だと思います。