奈良の動物病院 山尾獣医科病院

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感染症

今日はレプトスピラ感染症、SFTSウィスル感染症のお話です。

双方とも人畜共通伝染病に指定されており、動物(種類によります)も人も感染し、重症例では死に至ることもあります。

レプトスピラ感染症は湿地や空き地の水たまりなどに、保菌したネズミやアライグマが排泄した尿に後からやって来た動物が接触し感染します。怪我や皮膚炎があると感染頻度が高まります。

発熱、活動性の著しい低下、嘔吐、下痢、黄疸(初めは尿がやたら黄色くなる)などにより受診されることが多いです。血液検査では腎障害や肝障害が認められます。確定検査はPCR法にて病原体であるスピロヘータを確認するのですが、通常はIgG,IgM抗体を測定して症状と見合わせて診断とします。

看病中はその子の排泄物には直接触らず、必ず手袋、マスク、専用の着衣(割烹着など)を準備してそれに当たって下さい。また処理した汚物はしっかりと管理して、他の動物やヒトが触れないようにすることが大切です。

治療には脱水補正のための点滴や嘔吐のコントロール、抗生物質によって病原体をアタックします。しかし既に痛んだ臓器はどこまで修復されるのかが生死を分ける問題点です。

予防注射はあります。今一度屋外へのお散歩が多い場合は、ワクチン接種項目にレプトスピラが入っているかご確認ください。入っていなければ追加接種します。

 

SFTS感染症はマダニから感染するウィスル性疾患で、この10年ほど前から日本全国で人の感染が確認され、高齢者や免疫の低下した方々では重症化している疾患です。また重症例では致死率は27%ほどと言われており、怖いと騒がれている人喰いバクテリア、即ち溶連菌感染症の致死率は30%ほどですから、あまり変わりません。それだけ怖い疾患なんです。

奈良県では2024年6月に初の人における感染者が確認されました。症状や検査におきましては発熱、嘔吐下痢、腹部痛、血小板の減少などが挙げられます。

また動物分野ではネコにおける感染報告が多く聞かれ、発熱、食欲や活動性の著しい低下、嘔吐などが受診の理由です。血液検査におきましては、黄疸、血小板、白血球の減少、肝臓の障害が目立ちます。

治療薬もなく対処療法しかありません。

マダニは庭にもいます。庭にも出ていない小型犬にもマダニが付いていた事もあります。それは野外の散策がお好きなご家族が居られたご家庭でした。恐らくですが、ズボンなどの裾に付いてやって来たと考えられます。事実フィールドのマダニ調査では、大きな白い布を両手に持って、雑草の表面を撫でるように数回往復させ、そこに付いたマダニの種類や数をカウントします。たったそんな作業でマダニは付くのです。

昔奈良公園の鹿をアメリカに親善大使として送った際、アメリカの検疫でマダニの付着を理由に止められ送り返されてきたことがあったと聞きます。レーガン大統領の時だったでしょうか。どこにでもマダニはいます。全てのマダニが病原体を持っているは限りませんが、そのつもりで見ておいて間違いありません。

マダニを見つけましたら、決して素手ではなく手袋を装着し出来ればマスクゴーグルも着けてマダニ除去をしてください。決して潰してはいけません。潰さずにガムテープなどに張り付けて逃げないようにし、ビニール袋に入れて封をしてからゴミ箱に廃棄してください。

また動物たちにはマダニ予防薬の投与をしっかりと実施し続けてください。

ネコの伝染性白血病やネコのエイズの時もそうでした。またイヌのジステンパー感染症が流行した時もそうでした。いつどこからやって来るのか、全く予兆がなく、気が付けば隣に居るのです。コロナがそうであったように。

私たち動物医療従事しているものとして、動物の健康ともにご家族の健康、スタッフさんの健康、地域の方々の健康にも留意が必要で、皆様方に過度な心配を与えないよう、しかし的確に現状をお伝えする必要を感じております。とても難しい事だと痛感します。

どうか他人事ではありません。

人から人への感染に関しましては東京都での例ありますが、これは感染した患者さんから医療従事された医師への体液による感染とされて居り、一緒に住んでいるだけとかお話しただけでの感染は確認されておりません。

感染力は然程強くないようですし、保健所による指導ではアルコールや石鹼などによる手指の消毒も有効だと聞きました。

くれぐれも冷静にかつ慎重に情報を取り入れてください。

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